夜無

はりぼて

どっちも悪いと思うよ。「どっちが悪いと思う?」 喧嘩している両親にそう聞かれた。喧嘩両成敗という言葉はその時の僕をちょっぴり救ってくれた。 できれば誰も傷つけたくない平和主義者なのだけれど、気を遣うのには体力を使うからなのか自分を封じ込めた...
エッセイ

アーティストは何者にもなれなかった者が最後に行き着く場所

アーティストは理屈抜きでかっこいい小説家になりたい人、バンドマンになりたい人、絵で食べている人。「私もあの人たちのように輝きたい」そう思ったことは誰にでもあるだろう憧れること、それはごく自然なことだ。けれど私は、アーティストは目指すものでは...
「ことば」について

言葉と出会うまで

私はおおらかで大人しい子どもだったので、しゃべりたい人が勝手に寄ってきて、相手が一通り満足するまで、うんうん、と聞いている子どもだった。正直その話の内容はさほど頭に入っていなかったが、ただニコニコしながら相槌を打っている私に、相手も満足して...
小説の断片

薄暗い自室にて

「黄色い線の内側までお下がりください」駅のアナウンスがやけに鮮明に聞こえる。遠くに見える真っ黒なガラス窓が陽炎で揺らいでいる。目の前の線路はまるで黒い悪魔が手招きしているように張りつめている。走馬灯くらい幸せな思い出を。そう願っていたが、何...
エッセイ

神は存在するか?

「神は死んだ」とニーチェが残してから100年余り。私は、神はまだ生きていると思います。もっと言えば、人がいる限り、神は消えないと思っています。これは宗教的な話ではなく、論理的な話です。 【この世界の成り立ち】という究極の疑問を考えるならば、...

自己暗示

確かに自分に暗示をかけている以前と比べてどちらが苦しいかと言われると、何も好きじゃない以前よりは苦しいことは増えたけどマシ。生きる意味が分かっていないのに、生の実感を求めて、溺れて。誰も見ていない家の中で傷の残らない自傷行為を繰り返している...
散文

幸せになりたいわけではない(2)

褒められたいわけでも聞いてほしいわけでも有名になりたいわけでもモテたいわけでも交わりたいわけでも遊びたいわけでも自分になりたいわけでも将来の不安を、孤独を、痛みを無くしたいわけでもないそもそも幸せになりたいわけじゃない どれも真意じゃなくて...
小説の断片

無題(小説)抜粋

時計の針が毎秒刻んでいる部屋の明かりはやや薄暗いが、彼女の黒い瞳が分かるくらいには明るい。 「ふふ」「どうしたの?」「ん?えーとね、今ね、何も考えてなかったの」僕は笑いながら言った。すると彼女もその言葉が面白かったのか、笑った「考えてなかっ...
日記

東京は夢を追っかけていない人にはいづらい

これは、私が3年ほど前に青春18きっぷで九州まで一人旅をした時のメモです。ノートと鉛筆ときっぷと1万円だけ持って、10日間の旅に出ました。 ――― 東京は頑張る人の集合体だ。夢を追いかけて東京に来るでも初めから東京にいる僕は、最近分かったこ...
散文

雨降らせて地固めたい

つまらん内側にあるどす黒いもんが見えてこん一部の界隈ではああ綺麗だねなんて評判なんだろうが、知ったこっちゃねえ俺には見えてこねえ表面こねくり回して、美しい言葉ならべて、読んでもらうための本を書きやがって息が苦しいんならもっと死にそうな文章書...