時計の針が毎秒刻んでいる
部屋の明かりはやや薄暗いが、彼女の黒い瞳が分かるくらいには明るい。
「ふふ」
「どうしたの?」
「ん?えーとね、今ね、何も考えてなかったの」
僕は笑いながら言った。すると彼女もその言葉が面白かったのか、笑った
「考えてなかったんだ笑」
その言葉は僕の心が言ったのか、と思うほど心に馴染んだ。
「うん。でね、次に浮かんだ言葉を口に出そうと思ってたの。そしたらさ、結局何も浮かんでこなかったんだけどさ、そんなに頭空っぽなのに、声に出したら瞬時に伝わる距離に君がいるんだと思ったら、君がもう身体の一部のようで笑ってしまった」
「それで笑っちゃうんだ」
「うん、なんかね」
僕はそう言いながら、彼女の頭に手を置き、頭の位置を確かめるように親指だけ動かした。
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