「君はどうして浮いていられるの」
「それはね、泳ぎ方を知っているからよ」
澄ました顔で君は言う
「君はどうして深海の景色を知っているの」
「それはね、そこで生まれたからよ」
「じゃあどうして空の景色も知っているの」
「それはね———」
もう溺れてもよかった
古びた救命胴衣が足枷にしか思えなくて
無我夢中で脱ぎ捨てた
けれどなぜだか脱げていなくて、
1秒前が全て夢のようで、
息できる自分が苦しかった
どうして僕は、私じゃないのだろう
どうして僕は、君じゃないのだろう
沈んだまま生まれたかった
すると君は言う
「いいところしか見せてないだけだよ」
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