野良が二匹いる。
地べたに座って様子を窺ってみる。
しかしやはり警戒される。
すまない。
こんな体で生まれたばかりに。
さぞ怖いだろうや。
そこで私は、虚空を見渡したり、手帳に何か思いついたフリをする。
しかしそれが却って邪だ。
怖くないよ、と言っているようだ。
一挙手一投足、油断させるための演技に思えてくる。
野良は依然として警戒を緩めない。
そりゃそうだ。
笑顔で近づいてくる大人は信用できない。
私だってそれに疲れてここへ流れたのだ。
すまない。
君の安息を願うなら、今すぐここを立ち退くべきだ。
誰しも一人で生きてはいけないが、その相手が私である必要はない。
現に先ほどもお母さんが声をかけていたじゃないか。
「今日もおるとね!?」
そして通りすがっていった。
野良は一瞬そちらに安らぎを向けて、再び私に警戒を向ける。
私はこの路地の新参者であり、このご近所の異分子であり。
即刻立ち退くべきであるというのに、私は傲慢だ。
仲良くなりたいという邪な心だ。
すまない。
怖がらせてしまって。
野良は、なおも私を見つめている。
その瞳がやけにたくましく見え
たくましく見え。
……私なのか?怯えているのは。
そして私は
住処を失っていることに気づく。

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