『砂漣の歌』

 

ひとけない緑青ろくしょうに打ち捨てられた石人せきじんが
在るかない遠燈えんとうを眺めております。
夜濯よすすぎばかりさやさやと
静寂しじまを湯浴む月色つきいろの宵です。

こんな日は在りし日の沖つ雷鳴も聞こえきて
美の麗流れいりゅうに通じんばかりに
生糸は綻び 哀しみに泥濘ぬかるみ ため息ばかり草臥くたびれて
余生さながら長雨の宵です。

こんな日はかかる夜よも思へば美しからずやと
そう殊更に生きなくとも深夜の想いは質量を持ち 微量ながらも質量を持ち
やがて砕けて砂となり 漣なみに揺れては安ならんでゆきます。

それはやわらかであたたかで芒原のぎわらのようにりんりんとして
磔はり付けられた星星も蛍のように光る時節ころ…………
今はた途みちに緑青に 砂の記憶は彼方かなたです。

 

 

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